娘の性格
中学一年の娘は楽しそうに学校に行っている。息子とはまるで正反対のよう。
だけど見ていて、やっぱり神経質な所は似ているよな。と思う。
バスケの部活に入った。
高知にいた時、仲のいい友達3人とよくバスケをやっていた。
やっていたと言っても本当にじゃれあうようなボール遊び。
その楽しさと恋しさがあったんだろうなぁ。
バスケに入った後の家庭訪問で、担任の先生が『びっくりしました。意外でした。僕はてっきり美術部かなぁって勝手に思ってました。美術部はどう?ってオススメしたんですけどねぇ』と言っていたけど、うん、実は私もなんです。
もっとゆるい部活に入るかなぁって。
そこの中学は、全体的にゆるい。
科学部と言うのがあって、説明では『ゆるい!来たい時だけ来れる!パソコンでマイクラも出来る!たまに来るのもOK!』と書いてあって笑った。
成る程。生徒がこんな部活があったらいいなと言うものを、人数が集まりさえしたら、作ってくれるんだね。素敵。私なら帰宅部か科学部だね。
全校的に少なくはあるものの、部活に入ってない子もちらちらいるそう。
帰って寝たいからと言う理由なら昼寝部なんですよ。と笑いながら先生が言う。
もちろん、そんな雰囲気の中のバスケ部。
強豪校からすると、とてもゆるいのだろうけど、やはりチーム戦となるとある程度は厳しさはある。
チームワークも取れないといけないしね。ふざけていて怪我でもしたら大変。
それなりにしごいてくれる顧問もいる。
なので、気楽な部活を選ぶと思っていた娘の選択に、私も旦那も、担任も少し戸惑った。
案の定、娘はこの二日間、部活の時間中腹痛で保健室にこもっていた。
心配してくれた保健医が電話をくれ、さて、どう言った聞き方をしてやるか…と思ったら、帰宅した娘がせきを切ったように、目を真っ赤にさせて話し出した。
部活に行けない。
バスケは好き。学校も好き。先輩も優しい。同級生も優しい。顧問はちょっと怖いけどきらいじゃない。なのに部活に行けない。部活のバスケは好きじゃない。
高知でやっていた、やりたいバスケと違う。
でも辞めたらダメなんだよ。先輩に心配かけるから。靴も服も買ってくれたお母さんにもガッカリさせちゃう。顧問にもがっかりさせる。3年間続ける気持ちで頑張りましょうって言ってたもの。
ちょっとしか出来ない私は、今辞めたら、根性無しになるでしょう?
なるほどなるほど。
つまんねぇ。やーめよ。
の気持ちでストップしていれば良いものの、自分以外の想いばかりを優先させていたから、そうなったのね。
優しい子。繊細で神経質で、堪えようとする優しい子。
でも、とても融通の利かない子ね。
もし私が、今不登校児の親でなかったら、なんと言っていただろうか。
もう少し頑張れ?うーん、どうだろう。体の不調と涙を堪えた姿に、言えるだろうか?
生活の環境がガラリと変わっただけでも大変で、お友達が出来て学校が楽しい!って言ってるだけでお母さんは涙が出るほど嬉しいのに、部活でがっかりするかなぁ?
あのねぇ、顧問が3年間続ける気持ちで頑張りましょうって言ったのはそう言うことじゃないんだよ。
靴や服が無駄になるから辞めないでなんて、誰が言った?
先輩も、担任も、保健医も、お母さんも心配してるからといって、それを理由に辞められないなんて、かってに人の気持ちを辞められない理由に解釈しちゃダメだよ。
心配かけてるなぁって思ったら、我慢しないで胸の内を明かしてごらん。誰も怒ったりしないから。
それが一番心配してくれている人への礼儀になるよ。
やめようやめよう!しばらくは早くおうちに帰ってきなよ。お母さんなれない専業主婦で、めちゃくちゃ暇なんだ。一緒におうちにいようよ!お兄ちゃんとゲームでもしなよ。今、うち外装工事で一日中やかましいから犬が怯えてんだよ。一緒にいてあげてよ。
うん。でもきっとすぐ他の部活に入るよ。楽しそうなのがあるんだ。
と娘が言った。
いいよいいよ。それでいいじゃないか。
世界が狭いんだから、一生懸命楽しい道をその中で探してそこにとどまりなよ。
お母さん見てみなよ。一番の年頃に引きこもりして外の大変な事一切してなかったのに、今じゃ職場で、仕事も主婦業もすごい根性だよねなんて言われていたのよ?たかだかその3年間の部活で、根性無しに育つとは思えないなぁ。
最後は横で聞いていた息子が笑いながら『そうだよ。おまえがそれで根性無しになるなら、学校行ってないお兄ちゃんはなんなのよ。自宅警備員をなめんな。』と自虐ネタを言うから、吹いた。
すぐ保健医に相談した。
もし、彼女が顧問に部活をやめると言いに行く時、すみませんが後ろにいるだけでもいいので、一緒に立ち会ってやってくれませんか。
そう言ったら保健医はパアッと声が明るくなって『もちろんです!もちろんもちろん!一緒に言いに行こう!!』
素敵な受け答えをする人だなぁと思った。
その後娘と何やら話して電話を切った。
娘はすっかり元気になっていた。
ニコニコとよもぎ餅を三つ平らげた。
めんどくさくて生きづらいだろうなと思った。でもそこが貴女の魅力よ。
だけど、生きづらくしている中に私もいるのは確かだ。息子の事でいっぱいの時、お兄ちゃんをずるいとか言わないで。その言葉をあの子は忘れていない。なおの事言葉を受け取らないとと必死になっている。私のせいもある。
これは誰が何を言おうと、いつまでも私は私を戒める。
後に聞いた話、よく気を配ってくれる娘の担任が何故美術部を勧めていたかと思ったら、美術部の顧問だったから笑った。
部員増えると思ったのに。と笑いながら言っていた。
ありがとう先生。