結局息子は
結局息子は昨日と今日は行けなかった。
ギリギリの時間まで暗く泣きそうな表情だった。
飲み物も食べ物も一口も手を付けない。
行ってしまえば、あと一歩かもしれない、私にもその期待があるので、そのまま静かに様子を見る。
旦那が遅出にしてくれたので『お父さんと途中まで行こっか!』となり、なんとか着替えた。なんとか髪をセットした。なんとか歯を磨いた。
普段休んでいる時は、割とそう言った身の回りの事は普通にやる。
勿論年頃の中学生男子なので、ほっといたら一日中パジャマだったりは平気だけど、だらし無い!着替えろ!と言ったら、はいはいと素直にする。
しかしその日はそんな一つ一つの行動も、拒むかのように覇気も早さもない。
こちらとしても、やっぱり、時間を申し合わせている以上は先生の事もあるので気もそぞろ。
今電話かかってきたらちょっとマズイなぁ。息子の前だしなぁ。プレッシャーにもなるだろうしなぁ。でも先生待たしてるんだろうなぁ。申し訳ない。
校門前まで行ってさ、やっぱりダメだったら帰ってこよう!そんなに思い悩まなくてもいいんだよ!ただ、行けるかなーどうかなーで向かって見るだけなんだから!
と旦那に背を押され、やっと二人は玄関を出た。
その五分後、先生から電話。
今、今やっと出たとこなんです。ごめんなさい。
たどり着くかどうか分からないけど、主人と一緒に行きました。もう少しだけ、待ってやって下さい。
そう先生に話して20分後、旦那から電話。
『今から帰るねー。俺を駅までつんでってー』
息子は?
『うん。一緒に帰ってるよ。頑張ったよ。』
そうか。
旦那との電話は、思いっ切り落胆の声が出たと思う。
二人が帰って来て、息子と入れ違いに私は車に乗った。旦那から話を聞く。
途中までは頑張って話をしながら行ってたんだよ。学校が見えて来たらさ、振り向いたら伏せって座り込んでて。可哀想すぎて。あぁ、こりゃ今日は無理だなって。だからそのまま俺だけ行って先生に挨拶してきた。明日ももう来ませんって。でも、勉強はせっかくしたんだけどって言ったら、内申には付かないけど、テストは貰えるんだって。家でやらせようかと思って、ちょうだいって言っといた。
ダメだ。息子のその姿を想像してしまってはダメだ。
涙が出そうだった。
でも出さなかった。
学校にはもう行けるとは思ってないし、たかが中学だとはもう思ってるんだよ。
だけどさ、そっかぁ、頑張ったんだけどなぁという思いと、もうちょっと背中押せば行けたんじゃない?という思いが交錯する。
帰ると息子は二階の自室に居て、居間はシンとしていた。
ま、久々に制服姿見られたからいっか。と言い聞かす。以前よりは大して私ダメージないな。
だってすぐそのあとお腹すいた。テレビも付けて犬と戯れて、ゴロゴロしてた。
そのうち息子が降りてきた。
ゲームしてもいい?
いいよー。お腹空かない?
うん。大丈夫…。でも、ダメだったな。
いや、今回のはお母さんが動かなかったからだよ。さっさと適応指導教室申し込んでれば違ってたかもしれないし。いいじゃん!家でテスト出来んだろ?
て言うかさ、テストより、学校より、今しなくちゃダメな事私わかった!
お前、もっとチャリ漕いで痩せろ。
男前の無駄遣いしてる。
どんだけ男前に産んでやったと思ってんだ。陽に当たれ。シュッとなれ。イケメン力見せろ。
…ちょっと何言ってるか分かりません。
とハニカミながら言われた。
やっぱりお腹空いた。と朝昼兼用にご飯を食べた。
私も一緒に食べたのはまずかったな。
私朝ご飯食べたっての。
昼に娘が帰って来て、お兄ちゃん頑張れた?と聞いて来た。
うーん、行けなかったねぇ。
と言ったら、あそう。私もテストイマイチだった。
で終わった。
待って待って。どさくさに紛れてないか?
二人とも、よく頑張りました。