書いていた物
私が不登校をしていた時、ひたすら絵を書いたり漫画を読んだりゲームをして過ごしていたのだけど、一度だけネームを書いて、原稿用紙に下絵を描いて、ペン入れ、トーンを貼って完成させた漫画がある。
自分をモデルに描いた漫画だった。
どう言う思いだったのか人に知って欲しくて描いた漫画だったけれど、結局誰の目にも止まる事なくその原稿は無くなってしまった。捨てた気もする。
絵は拙くて、物語も物語と言えるほどの、人に見せられる様な立派な物ではないと思うけど、時々ふとまた見返したくなる。
まぁでもいいや。昔の私が色々決別するために捨てたのだろう。
忘れた頃に思い出す程度のその原稿は今も行方不明で、捨てた気がするなぁが大きいけど、たまたま娘とダラダラおしゃべりをしていた時に聞いてしまった。
『あのねお母さん、あのね。お兄ちゃんには、お母さんが嫌な気がするかもしれないから黙っとけって言われたけどね、あのね、お母さんが昔描いてた漫画、この前高知に帰った時に見つけちゃって、見ちゃった…』
ドキリとした。
どんな内容だった!?探してたのそれ!!と食い気味に聞いてしまった。
しかし話を聞いて行くと、同じ内容ではあったけれど、ネームの方だった。
ノートに描いた下絵。
しかも数ページしか描いてないやつだった。
最後まで描いたネームは別のノート。
なんだ…ちょっと残念。
『お母さんが自分のことを書いたのかなぁって思って、すごく死にたかった所が悲しかった。一番最初のページが、手首から血が流れていたから悲しかった。でも、お兄ちゃんが、すごくうなずいてて、すごく分かる。って言ってた。悲しかったけど最後まで書いてて欲しかったなぁ。最後が気になるなぁ。』
そうか…それはすごく残念。
そうならば君達に見せたかったな。
本当に見せたかったな。
私は結局何一つやり切ったものがないな。
私はバカだな。単細胞だな。
そもそも私は面倒くさがりだから、物を大切に保存するのが苦手でね。
その時いらないと思ったらすぐ手放すんだ。
物も、人も、気持ちも。
そのネームの続きを今描いても意味が無いからな。
残念だなと思う。
てか漫画なんてもう20年近く描いてないしな。
もう描けないや。
あー残念!
物語の最後はね、実は自分でもおどろきなんだけど、なんだかんだでニコニコしながらパン屋で働いてて終わりだったよ。
そこはすごいだろ。
予知してたみたいだろ。